1. はじめに

　現(xiàn)行の學習指導要領(lǐng)ではコミュニケーション能力の育成を目指した英語の授業(yè)が求められており，そのためには教室內(nèi)において生徒どうしのインタラクションを促すペアやグループ活動を積極的に用いるべきである。なぜなら，インタラクションによって第二言語の學習に必要とされる，理解可能なインプットやアウトプットおよびフィードバックが得られるからである。また，コミュニケーションを支える語彙や文法知識の學習においてもペアやグループによる相互交流（時に母語を用いて）が有効であろう。しかしながら，學習者をただ単にペアやグループにさせ，タスクや練習を行わせるだけではコミュニケーション活動や相互交流が活発になるとは限らない。積極的にタスクや練習に取り組まない生徒や一方的に活動を支配してしまう生徒がいる場合，ペアやグループ活動の成果が期待したほど上がらないことも多い。
　このような問題を解決するためには，Storch (2002)が述べているように，ペアやグループ活動が「協(xié)力的」な関係の下で行われる必要がある。ペアやグループ活動をより効果的にし，さらには，自分の學習だけではなく，互いの學習を最大限に高め合う協(xié)同的な狀況を作り出し，協(xié)力的な関係に基づくインタラクションや相互交流を可能にするためには，Johnson, Johnson & Holubec (2002)が提案している「協(xié)同學習の基本的構(gòu)成要素」をペアやグループ活動に組み込むことが有効であると思われる。

2. 協(xié)同學習とは

　Olsen & Kagan (1992)によると，協(xié)同學習とは「グループ內(nèi)で良い人間関係に基づく學習者間の情報交換によって學習が成立し，また，各學習者が自分自身の學習に責任を持ち，仲間の學習を最大限に高めようとするグループ學習」（p.8）と定義されている。したがって，単なるペア學習やグループ學習が自動的に協(xié)同學習となるわけではなく，グループ內(nèi)の學習者どうしの人間関係を構(gòu)築することによってお互いを信頼し，自分と仲間の學習に対して責任を持つためには，一定の條件を満たしたペア活動やグループ活動が必要となる。Johnson, Johnson & Holubec (2002)は，効果的な協(xié)同學習を生み出す活動（あるいは授業(yè)）を構(gòu)成するために，以下の5つの基本的構(gòu)成要素を提案している。

(1) 肯定的相互依存（互恵的な協(xié)力関係）がある（positive interdependence）

　協(xié)同學習において最も重要な要素である。グループの仲間は，自分たちが「浮き沈みを共にする（sink or swim）」の関係にあることを知っていなければならない。グループの各メンバーは，自分たちが與えられた課題を?qū)W習することと，その課題に関して仲間全員の學びを確実にする責任が求められる。個人の成功はグループの成功と結(jié)びついており，グループが成功すると個人も成功する。グループの目標を達成するために，お互いに助け合い，尊重し合う必要がある。協(xié)同的に活動するためには，課題とグループの目標が明確でなければならない。

(2) グループの目標と個人の責任が明確である（individual and group accountability）

　目標達成に対して個人およびグループにはその責任がある。すなわち，グループ全體としての成果が評価され，その結(jié)果が達成基準をクリアしたか否かの確認が個人に返されるとき，そこにはグループとしての責任が存在する。グループの各メンバーが，グループ活動の成功のために割り當てられた役割を認識し，確実にその責任を果たすことが求められる。役割は固定せず，輪番制などにして等しく責任を負い，さまざまなスキルを身につけさせることも重要である。協(xié)同學習グループの最終目的は，グループの各メンバーが強い個人として成長することである。
　以下は，筆者が，學生とともに作成し，大學の授業(yè)でよく使用する役割とその內(nèi)容の例である。

(3) 対面しての促進的（積極的）な相互交流がある（face-to-face promotive interaction）

　課題遂行のためには，対面して，積極的に援助し合うことが求められる。グループの各メンバーが，グループの目標を達成するために，お互いの努力を認め，勵まし合うとき，また，問題の解法を教え合ったり，あるテーマについてディスカッションするとき，促進的な相互交流が起こる。

(4) 小集団における対人的技能（スキル）を獲得し，使用する（interpersonal and small-group skills）

　協(xié)同學習グループでは，生徒たちは教科の內(nèi)容の學習（タスクワーク）およびグループの一員として機能するために小集団における対人的技能（チームワーク）の獲得が求められる。つまり，學習課題とグループの仲間とうまく活動するために必要な対人関係技能（ソーシャル?スキル）やグループ?スキルを意識的に學ばなければならない。Jacobs, Power & Inn. (2002: p.80)は，以下の「協(xié)調(diào)の技能」を挙げている。

　筆者は，上記の內(nèi)容を資料として學生に渡すだけではなく，授業(yè)や活動の前に，パワーポイントを用いて教室のスクリーンに映し，確認することによってこれらの技能を常に意識させている（筆者は，social skill awarenessと名付けている）。

(5) グループの改善の手続き（ふり返り）を行う（group processing）

　協(xié)同的なグループ學習が効果的になるためには，グループがいかにうまく機能したか（あるいはしなかったか）を話し合う必要がある。つまり，(a) グループの仲間のどのような行動が役に立ち，あるいは役に立たなかったか，また，(b) どの行動を続け，どの行動を改善すべきか，を決めるためにグループでふり返ることが大切である。

　このような協(xié)同學習の基本的構(gòu)成要素を取り入れることなく，単に課題をペアやグループに與えて學習を促すだけでは，グループ學習の質(zhì)に差が出てしまう。非常に質(zhì)の低い見せかけのグループができたり，逆にとても質(zhì)的に高い協(xié)同學習グループができることもある。課題からグループ學習を始めて質(zhì)の高い協(xié)同學習グループの形成を待つより，上記のような要素を取り入れることにより質(zhì)の高い協(xié)同學習グループの形成を促す指導が求められるだろう。

3. 実踐への示唆

　近年，英語科における「學び合い」や「協(xié)同學習」を取り入れた実踐が報告されてきている（大場，2013等）。協(xié)同學習に基づく授業(yè)を展開していくためには，信頼に基づいた人間関係が教室の中に築かれていることが大切であるが，「構(gòu)成的グループエンカウンター」のような人間関係づくりのための活動を徹底的に行い，學級內(nèi)の人間関係が構(gòu)築されるまで學習活動を行わないわけにはいかない。當然ながら授業(yè)の中でも人間関係が構(gòu)築されるような活動や意識付けが必要である。しかしながら，多くのペア學習やグループ學習は，「課題（タスク）」を中心に據(jù)えた，「課題基盤型のグループ學習（task-based group work）」の場合が多いのではないだろうか。つまり，はじめに「課題（タスク）」ありきの，いわゆる半強制的な學びのスタイルである。結(jié)果的に人間関係がよくなることもあるかもしれないが，逆に，人間関係が悪化してしまう可能性もある。課題としての個人作業(yè)を協(xié)同化する場合においても，わからない生徒がわかる生徒にたずねることになるが，だれにでも何でもたずねることができる雰囲気（人間関係）が必要であり，やはり，お互いの信頼関係が不可欠となる。
　一方で，対人的技能（ソーシャル?スキル）や授業(yè)のルールを意識させることによって，お互いのことをよく知ることができ，それが人間関係や信頼関係をつくることにつながり，協(xié)同（協(xié)力）しようとする心も育てることができるであろう。つまり，教室における，學習規(guī)律（ルール）と人間関係?信頼関係（リレーション）づくりを心がけ，支持的風土を?qū)W級內(nèi)につくる指導が大切なのである。したがって，グループ學習（學び合い）の結(jié)果として人間関係がよくなるのではなく，人間関係がよくなる仕掛けに基づき，質(zhì)の高い対話や學習（學び合い）が生まれるような手立てが必要である。お互いの存在を認め合い，自分の存在意義を感じることができる集団づくりを，教科の指導を通して行うことが「信頼に基づく協(xié)同學習（trust-based cooperative learning）」の具體的な手立てとなるだろう（大場，2015）。また，Jacobs, Power & Inn (2002)には，多くの協(xié)同學習の技法が紹介されており參考になるが，それらの技法をどのように英語の活動に組み込むと効果的かは各教師の課題であろう。
　Sunshine English Courseの平成28年度版においては，My Projectに協(xié)同學習の要素が取り入れられている（教科書では「協(xié)働」となっているが，ここでは便宜上「協(xié)同」と同義と捉える）。例えば，3年生のMy Project 8では，「日本文化を紹介しよう」というスピーチ原稿を作成する過程で，「グループの友だちの原稿を読んで，お互いにアドバイスしましょう」（p.65）という活動が組まれている。

My Project 8 日本文化を紹介しよう（3年p.65より）

　この活動が協(xié)同的で効果的になるためには，まず，グループ學習の約束事（ルール）を設定し，徹底させることが必要である。例えば，以下のような約束事が挙げられるだろう。

　また，先に示した「協(xié)調(diào)の技能」を常に意識させることも大切である。それぞれの項目に関してどのような英語の表現(xiàn)があるかを一覧にして生徒に持たせ，練習させることによって，英語による意見交換も少しずつできるようになるだろう。
　スピーチ原稿の英文に関しては，どのような観點からアドバイスするのかを（內(nèi)容面や文法面などにおいて）具體的に提示し，お互いの原稿をよくしようとする互恵的な関係を持たせることが大切である。この場合，いきなりグループでの話し合いをさせるのではなく，必ず，「個人思考」の時間を設定し，自分の考え?意見を持たせることがグループでの話し合いの質(zhì)を左右することになる。
　活動の最後には，しっかりとふり返りを行い，だれのどの行動がよかったかなどグループ內(nèi)でシェアすることが大切である。対象は大學生であるが，筆者は協(xié)同學習を用いたプロセス?ライティングの活動において以下のようなふり返り項目（一部）を用いた。

　あまり多くの時間はかけられないが，表面的なふり返りにならないように気を付けることとも大事である。もちろん，協(xié)同の要素はこれらの活動だけに取り入れるのではなく，ペアやグループで活動するときは常に意識したいものである。また，生徒に任せっきりにするのではなく，グループの活動がうまくいっていない場合などは，教師が適宜介入し，指導することも必要である。その意味で，教師は日ごろから生徒との人間関係づくりも意識する必要がある。　

參考文獻

Jacobs, G, M., Power, M, A., & Inn, L, W. (2002). The teacher’s sourcebook for cooperative learning: practical techniques, basic principles, and frequently asked questions. Thousand Oaks, CA: Corwin Press. 関田一彥監(jiān)訳 (2005). 『先生のためのアイディアブック：協(xié)同學習の基本原則とテクニック』ナカニシヤ出版

Johnson, D. W., Johnson, R. T., & Holubec, E. J. (2002). Circles of learning: Cooperation in the classroom (5th Ed.). Edina, MN: Interaction Book Company. 石田裕久?梅原巳代子訳. (2010).『學習の輪：學び合いの協(xié)同教育入門』二瓶社

Olsen, R. E. W-B., & Kagan, S. (1992). About cooperative learning. In. C. Kessler (Ed.), Cooperative language learning (pp. 1-30). Upper Saddle River, NJ: Presence Hall Regents.

Storch, N. (2002). Patterns of interaction in ESL pair work. Language Learning, 52, 119-158.

大場浩正 (2013) 「英語スピーキング指導における?yún)f(xié)同學習の効果について：英語學習意欲と協(xié)同的活動への認識に関して」『英語授業(yè)研究學會紀要』第22號，17-31

大場浩正 (2015) 「協(xié)同學習に基づく英語コミュニケーション活動が英語學習意欲や態(tài)度に及ぼす影響：テキストマイニングによる分析」『上越教育大學研究紀要』第34號，177-186